−テラリスト宣言−ホームへ
ニュース&トピックス城源寺へようこそテラリストとは?城源寺に集え!紅さんの講談教室!リンク(準備中です)
読者投稿住職によるコラムなど檀家さん専用(準備中です)
Home

−庫裡から悶々−トップへ                                         (2011/02/08)
     第59回  醜き禁じ手の伝統
 
庫裡から悶々
Top
第60回 復興に向けてひたすらに祈ろう

第59回 醜き禁じ手の伝統

第58回 さつまいもブームに寄せて

第57回 怪しいタイガーマスク現象

第56回 思い出しても「ぞぉーっ」

第55回 あぁ、日本よ何処へ行く

第54回 黄海上の因縁

第53回 新聞の酒

第52回 追憶のフィンガー・メロディー

第51回 “きょろきょろ人”

第50回 さあ大変!ハが抜けた

第49回 誰ぞ知る

第48回 国鉄由来の事故さばき

第47回 「○にする」

第46回 ゾロ薬品の普及を妨げるのは誰?

第45回 仏像展余話

第44回 “逆出家”老尼の有情無情

第43回 『K・Y』の政教一致

第42回 消えた檀家

第41回 臆病は隠蔽の母

第40回 撒き餌政治

第39回 串刺しルート

第38回 鈴虫だって「リンリ」と鳴く

第37回 複眼で成功した『おくりびと』

第36回 「笑っちゃう」ではすまない

第35回 語り継ぐ義挙

第34回 良い夢見ようよ

第33回 舌禍読禍宰相禍

第32回 冒頭の終わり


第31回 振り込め詐欺の真犯人

第30回 「老人力」のすすめ

第29回 僧徒たるを悔ゆる日

第28回 偶感「昭和二十年八月十五日」

第27回 仰げば恥ずかし わが師の陰

第26回 横綱の品格

第25回 『黄門さま』いずこ

第24回 戒めの16文字

第23回 百年目の「汚物教師」

第22回 怠慢の「12分」

第21回 物言いの一番

第20回 沖縄戦集団自決の真相究明に妥協は許されない

第19回 落ち葉して木々凛々と

第18回 『広辞苑』と私

第17回 子なき家

第16回 “軽老精神”

第15回 5W1Hプラスα

第14回 教育勅語から酌むべきもの

第13回 失われたニッポン人のDNAは再生出来るか

第12回 助けられたり助けたり

第11回 怯懦な共犯者

第10回 「最良のもの」探す日々

第9回 内角の和の中にをり石鼎忌

第8回 世直し先生は街角にいる

第7回 ある天文学者の遺言

第6回 壊れる家々の悲鳴

第5回 嗚呼!硫黄島−兵士たちの慟哭が聞こえる


第4回 よく聴けよ!柳沢大臣

第3回 無機質な社会の中で


第2回 義挙へのもどかしさ

第1回 ついの棲み家は姥捨山

バックナンバー一覧


 カモン!ルーシー
とかくこの世はははんほほう話


感想等はこちらからお送りください
   メールフォーム

 檀林風発 
↑読者投稿欄


肇道和尚の「如是我聞」

 江戸は寛政年間、大横綱・谷風が活躍していた頃の話である。十両筆頭の佐野山は、小兵ながらきびきびとした取り口に加えて大の親孝行で評判の力士だった。
 ところが、その年の回向院場所は、大患いの母親の看病疲れと医療費の工面で食事も満足に摂れず、空腹を抱えて相撲を取っていたから、初日から9連敗して千秋楽を迎えた。このままでは給料なしの幕下転落か、廃業しかあるまい、と相撲好きは噂し合っていた。それに引き換え、飛ぶ鳥落とす勢いの横綱・谷風は期待通り、全勝街道をまっしぐらに突っ走っていた。

 どうしたことか、千秋楽の結びの一番に、その谷風と佐野山が取り組むことになったから、江戸っ子たちがびっくり仰天した。もともと番付も力量も格が違うし、場所中の成績にも雲泥の差がある。勝負は初めから付いているようなものだから、よほどの因縁が隠されているに違いないと、好奇心と憶測が渦巻いて取り組みの前評判はいやが上にも高まった。掛け事が大好きな江戸っ子は早速、今でいうオッズを吊り上げ、佐野山の手が谷風のまわしに触れただけで「5両だ」、「いや10両だ」と言い合い、「もしも佐野山が勝ったら家一軒を贈ろう」と約束するお大尽も現れた。

 さて、立会いの当日。判官びいきの大向こうからは「親孝行頑張れ」と佐野山への応援しきり。粥腹で土俵に上がり、勝ち目のない勝負に臨んだ佐野山は、声援にすっかり感激し、目からは大粒の涙が流れた。行司の軍配が返って立ち上がった二人。その展開に観衆はまたまた眼を見張った。谷風の懐に飛び込んだ佐野山は、そのまま谷風を土俵際へ運んだ。その瞬間、谷風は佐野山を腹に乗せてとっさの打っちゃり。佐野山は弧を描いて土俵の外に投げ出された。

 谷風さすが、と観衆の誰もが思ったが、行事の軍配はさっと佐野山に上がった。佐野山の体が落ちるよりも先に、一瞬早く、谷風のかかとが土俵を割っていたのだった。

 落語や講談が伝える「谷風情けの相撲」の一席である。まさかの大金星は、実は、佐野山の親孝行に報いてやりたいと谷風が仕組んで演じた八百長相撲。谷風が土俵際まで追い詰められたように見えたのも、実は谷風が自ら力の出ない佐野山のまわしを引きながら後ずさりしたからだった。もちろん実話ではないのだが、どうせ八百長をやるのなら、このくらい味のある芝居を打ってもらいものではある。

 3年前の時津風部屋での時太山暴行殺人以来、ロシア人力士による大麻汚染渦、そして、捜査中の野球賭博事件と、国技の大相撲が屋台骨を揺るがす不祥事で揺れに揺れている。相撲協会はついに春場所の開催を断念するに至ったが、今回の八百長騒動は土俵の上の問題だけに、致命的な打撃をこうむることは間違いない。「待ったなし」で改革に取り組まなければ、騒動は角界にとどまらず、司法へ、あるいは皇室へと飛び火するのではないか。そう思うと気が気でない。

 国技と言っても、似たようなスモウ・レスリングは世界中どこにでもあり、力士の国籍が多彩になったのも当然の成り行きだ。お釈迦様が相撲を取った記録もあったと伝えられており、古代インドでは相撲に勝つことが嫁取りの条件だったという。それでも日本の国技の地歩を固め、海外からも伝統を認められてきたのは、古事記以来の歴史と皇室との深いかかわりに裏打ちされていたためだ。それだけに今回の八百長については英国などでも話題になっており、国辱的な展開も見せている。「仏の顔も3度まで」である。相撲協会がよほど思い切った改善策を打ち出さないが切り、国内外の不信感を払しょくすることはできまい。

 事態の深刻さを知ってか知らずか、相撲協会はじめ関係者の反応は相変わらず鈍かった。野球賭博事件の捜査の過程で押収された携帯電話から再生された力士たちの通話記録には、八百長の生々しい手口までが暴かれていた。 「立ち合いは強く当たって流れでお願いします」、「了解しました。では流れで少しは踏ん張るよ」……。それでもなおも、相撲協会理事長は「過去には一切無かった。新たに抱えてしまった問題だ」(毎日新聞)としらばっくれてみせた。それならばお尋ねしたい。野球賭博の捜査過程で判った事実をなぜ、新聞で報じられるまで隠していたのか。警視庁がこれだけの一大事を当事者に隠していたはずはないし、自らも「内部調査」で事実をつかんでいたはずだ。

 相撲協会が長年にわたり、警視総監や高検検事長の天下り組を理事などの要職に迎え入れてきた事実も忘れてはならない。元高検検事長の副理事長は今回の八百長騒動で「お役に立てなかった」と辞意を表明したが、大相撲を興業界の古い体質から脱却させ、暴力団との腐れ縁も断ち切らせて、国技として恥ずかしくない健全なスポーツに育てるのが彼らに負託された義務だったはずだ。とくに捜査を担当してきた警視庁のトップだった元警視総監は何をしていたのか。一線で活躍する警察官たちは大相撲の将来を憂い、再生を願って捜査を続けてきたに違いない。それなのに、かつての最高指揮官はあまりにも無力だった。「一将功なって万骨枯る」。その功もなしとなれば、部下たちの嘆きと怒りはいかばかりだろう。

 これまでに判明したところでは、八百長の裏では一番ごとに20万円、30万円、50万円といった大金が飛び交っていた。また、八百長を演じたのは十両クラスに集中しているようだ。このため十両には100万円余の月給が支払われているのに、幕下に転落すると場所手当などのほかは無給になる極端な待遇の仕組みを不祥事の元凶とする指摘がある。勝負の世界だけに上位者を優遇して闘志を掻き立てる狙いがあるのだろうが、相撲協会では昭和7年1月、待遇改善などの相撲道改革を訴えて大量の力士が脱会する「春秋園事件」が起きていることも想起したい。実に70年もの長きにわたって問題が改善されぬまま放置されてきたといっても過言ではない。

 近くは元小結の板井が内部告発したり、「週刊現代」誌に八百長相撲を暴露された時も改革に取り組む好機だったのに、相撲協会は証拠不足をよいことに頬かぶりを決め込んでしまった。どんなに幹部らが言い逃れしようが、「週刊現代」相手の裁判で勝訴しようが、世間は“シロ”であったと信じてはいない。法的には一事不再理の原則で裁判の蒸し返しはできないが、再生を期するなら改めて弁明する必要があるだろう。

 冒頭の谷風の美談相撲にしても、裏を返せば、江戸時代から八百長相撲の存在が常識と化してきたことを物語っている。世間は絶えず疑いの視線を投げてきたのに、相撲協会は国技の座に胡坐をかいてきた。協会のトップが「これまで八百長などはありません」ととぼけていたのでは、改革など百年河清を待つに等しい。石原慎太郎知事のように「相撲なんてこんなものだ」と割り切った見方もあろう。だが、東京場所の千秋楽には一国の総理まで駆けつけて渡す賜杯の重みを思えば、このままでは済まされる問題ではない。







和尚が聞く!‐NYOZEGAMON INTERVIEW‐

Copyright © 2007 JOUGENJI All Rights Reserved.
−テラリスト宣言−小田原 城源寺のホームページです。