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−庫裡から悶々−トップへ                                         (2010/11/23)
     第53回    新聞の酒
 
庫裡から悶々
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第54回 黄海上の因縁

第53回 新聞の酒

第52回 追憶のフィンガー・メロディー

第51回 “きょろきょろ人”

第50回 さあ大変!ハが抜けた

第49回 誰ぞ知る

第48回 国鉄由来の事故さばき

第47回 「○にする」

第46回 ゾロ薬品の普及を妨げるのは誰?

第45回 仏像展余話

第44回 “逆出家”老尼の有情無情

第43回 『K・Y』の政教一致

第42回 消えた檀家

第41回 臆病は隠蔽の母

第40回 撒き餌政治

第39回 串刺しルート

第38回 鈴虫だって「リンリ」と鳴く

第37回 複眼で成功した『おくりびと』

第36回 「笑っちゃう」ではすまない

第35回 語り継ぐ義挙

第34回 良い夢見ようよ

第33回 舌禍読禍宰相禍

第32回 冒頭の終わり


第31回 振り込め詐欺の真犯人

第30回 「老人力」のすすめ

第29回 僧徒たるを悔ゆる日

第28回 偶感「昭和二十年八月十五日」

第27回 仰げば恥ずかし わが師の陰

第26回 横綱の品格

第25回 『黄門さま』いずこ

第24回 戒めの16文字

第23回 百年目の「汚物教師」

第22回 怠慢の「12分」

第21回 物言いの一番

第20回 沖縄戦集団自決の真相究明に妥協は許されない

第19回 落ち葉して木々凛々と

第18回 『広辞苑』と私

第17回 子なき家

第16回 “軽老精神”

第15回 5W1Hプラスα

第14回 教育勅語から酌むべきもの

第13回 失われたニッポン人のDNAは再生出来るか

第12回 助けられたり助けたり

第11回 怯懦な共犯者

第10回 「最良のもの」探す日々

第9回 内角の和の中にをり石鼎忌

第8回 世直し先生は街角にいる

第7回 ある天文学者の遺言

第6回 壊れる家々の悲鳴

第5回 嗚呼!硫黄島−兵士たちの慟哭が聞こえる


第4回 よく聴けよ!柳沢大臣

第3回 無機質な社会の中で


第2回 義挙へのもどかしさ

第1回 ついの棲み家は姥捨山

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 カモン!ルーシー
とかくこの世はははんほほう話


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肇道和尚の「如是我聞」

 坊主と新聞記者の二足の草鞋を履いていた昔からの知人が、『新聞の酒』を送ったから、と電話をかけてきた。「新聞の酒だって?」と聞き返すと、「珍しい酒だから飲んでみてよ。ウフフッ」と意味ありげな笑いを残して電話は切れた。翌日、届いた包みを開くと、贈答箱の中に地元紙にくるまれた一升瓶が収まっていた。瓶にはラベルも貼られておらず、何の変哲もないガラス製だが、新聞紙の正面には墨痕鮮やかに“大吟醸”と記されていた。過剰包装の風潮に逆らって古新聞を活用すると同時に、地元紙の記事から地方の息吹を読み取ってほしい、との醸造元の願いを込めた趣向のようだった。それをわざわざ送ってくれた贈り主の気持ちを忖度しながら、しみじみ味わった。

 同じ日、国会では野党・自民党が柳田稔法相の失言問題を取り上げ、しきりに政府・与党側を追及していた。発端は、柳田法相が地元・広島市での国政報告会で「国会答弁は二つ覚えておけばいいんです。一つは<個々の事案にはお答えを差し控えます>あとは<法と証拠に基づいて適切にやっております>。何度も使ってきました」と、国会答弁で質問をかわすコツを喋ったことにある。大臣が自らは何も考えずに答弁している、と自認したのだから、野党側が国会軽視だと批判したのは至極当然だ。辞職に追い込まれたのもやむを得ない成り行きだろう。

 だが、見方によっては、柳田法相は愛すべき正直者ではないか。実力がないのに、ことさらに自分を大きく見せようとする御仁よりはマシかもしれない。大臣としての資質が取りざたされ、任命権者たる首相の責任もやり玉に挙げられたが、歴代の内閣を見ても、大臣にふさわしい資質を備えた人物がどれだけいたと言うのだろう。自民党政権時代は当選回数を重ねた議員への論功行賞として大臣のポストが与えられてきたのが実態であり、担務に精通している大臣の方が珍しかったはずだ。だから、答弁については官僚が下敷きを作るのが通り相場になっており、大臣たちも当たり前のように官僚が作成した“トラカン(虎の巻、アンチョコのこと)”を活用してきた。法務省の場合は、特捜部が捜査している事件について質問されることが少なくないため、刑事局長が「答えられません」と答えるのが慣例になっていたのだが、政府委員が直接答弁に立つことが許されなくなったため、官僚は答えずに済む答え方を大臣に伝授した。柳田法相はその裏話まで暴露して墓穴を掘った。それだけの話で、歴代の平均的な大臣と比べて資質に大きな差異があるとは思い難い。

 嘆かわしいのは、国会が失言やら不始末があると俄然、勢いづくことである。財政赤字や長引く不況、行き詰まっている年金制度、さらに尖閣諸島での日中間のトラブルなどなど、国政の根幹に関する議論はかみ合わず、積極性と真剣みに乏しいから、国民には国の進路がいっこうに見えてこない。この政権はいったい何をしようとしているのか、ひょっとしたに日本を潰す気ではないか……。次世代を考えると不安でたまらない。最近では日米安保に反対する人たちまでが普天間問題の行方にやきもきしているという。官房長官までが自衛隊を暴力装置と決めつける危なっかしい内閣だから、野党が失言を攻撃したり、小沢一郎・民主党元幹事長の金権体質を暴こうとするのは当たり前なのだが、民主党と自民党は構成メンバーや体質に共通する面が多々あるし、所詮は攻守が逆転しただけだから、国会でのやりとりはしらじらしく映ってしまう。柳田法相の失言をめぐる質疑では、昨日までの己の罪業を忘れたかのような自民党側がねちねちと政府の姿勢を糺すので、滑稽さを通り越し、いじめかいびりとしか映らなかった。

 そう、いじめが原因で6年生の上村明子さんが自殺に追い込まれた群馬県桐生市の小学校では、学級が崩壊していたため担任教諭らは学級の立て直しに気を奪われ、明子さんが1人で給食を食べていても救いの手を差し延べられなかったのだという。国の将来を考えぬ今の国会も、崩壊しているに等しい。このままでは国民が死に追いやられてしまうのではないか。

  「政治屋なんか組織社会という建物の土台となっている泥の中に住むウナギだ」。アメリカの毒舌家、A・ビアスは百年も前に『悪魔の辞典』で政治家の本質を喝破している。国益を忘れた日本の国会議員もまた、組織社会の土台の泥にうごめくウナギ、いや、土台に巣食うシロアリのようなものではないか。その腑抜けた姿勢を赤裸々にして鉄槌を加えることなく、興味本位に表見的な現象のレポートにうつつを抜かしている新聞もまた、能天気にすぎよう。活字離れの時代とは言っても、結局は新聞の報道や世論調査が有権者の投票行動を左右し、今の政治体制を作り上げているだけに、最近の無責任な姿勢には疑問だけでなく、怒りさえ覚える。

 ふと、“フーバー毛布”を思い出した。世界恐慌に見舞われた際の米国の大統領、ハーバート・フーバーは景気対策に成果を上げることができず、国民の不平不満を集めた。街にあふれた失業者たちは、新聞紙を体に巻きつけて寒さをしのだ。その新聞紙が“フーバー毛布”。無為無策の大統領をあてこすり、失業者たちが自嘲気味に笑いながら名づけたのだという。今や新聞は昔に先祖返りして包装紙代わりに使われることしか、人々の役に立たなくなっているのではないか。そう思うと、かつての作り手の一人としてはやりきれなくなる。贈り主の「ウフフッ」にも皮肉が込められていたのかもしれない。せっかくの到来物の酒がほろ苦く感じられた。







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