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−庫裡から悶々−トップへ                                         (2009/01/20)
    第35回    語り継ぐ義挙
 
庫裡から悶々
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第39回 串刺しルート

第38回 鈴虫だって「リンリ」と鳴く

第37回 複眼で成功した『おくりびと』

第36回 「笑っちゃう」ではすまない

第35回 語り継ぐ義挙

第34回 良い夢見ようよ

第33回 舌禍読禍宰相禍

第32回 冒頭の終わり


第31回 振り込め詐欺の真犯人

第30回 「老人力」のすすめ

第29回 僧徒たるを悔ゆる日

第28回 偶感「昭和二十年八月十五日」

第27回 仰げば恥ずかし わが師の陰

第26回 横綱の品格

第25回 『黄門さま』いずこ

第24回 戒めの16文字

第23回 百年目の「汚物教師」

第22回 怠慢の「12分」

第21回 物言いの一番

第20回 沖縄戦集団自決の真相究明に妥協は許されない

第19回 落ち葉して木々凛々と

第18回 『広辞苑』と私

第17回 子なき家

第16回 “軽老精神”

第15回 5W1Hプラスα

第14回 教育勅語から酌むべきもの

第13回 失われたニッポン人のDNAは再生出来るか

第12回 助けられたり助けたり

第11回 怯懦な共犯者

第10回 「最良のもの」探す日々

第9回 内角の和の中にをり石鼎忌

第8回 世直し先生は街角にいる

第7回 ある天文学者の遺言

第6回 壊れる家々の悲鳴

第5回 嗚呼!硫黄島−兵士たちの慟哭が聞こえる


第4回 よく聴けよ!柳沢大臣

第3回 無機質な社会の中で


第2回 義挙へのもどかしさ

第1回 ついの棲み家は姥捨山

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とかくこの世はははんほほう話


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肇道和尚の「如是我聞」

 東京・新宿のJR山手線新大久保駅で、カメラマンの関根史郎さんと韓国人留学生の李秀賢さんの2人が、ホームから転落した男性を助けようとして巻き添え死した事故から8年が経つ。

 この間の動きを振り返ると、2人の死が社会に与えた反響の大きさに改めて驚く。遺族のもとには多くの見舞金が寄せられ、それをもとに李さんの名前を冠した留学生向けの奨学金基金も設立された。全国各地で追悼コンサートが開かれ、関根さんの遺作を集めた写真展や写真集も評判を呼んだ。新聞報道によれば、千葉・勝浦には慰霊の観音像が建立されたという。さらに、2002年のサッカー・ワールドカップの際には、李さんの写真が日韓の懸け橋として韓国のテレビ・コマーシャルで放映された。ラグビーの日韓定期戦は、日韓の留学生会館を建設するためのチャリティー・マッチとして開催された。

 鉄道各社の安全対策も進んだ。国土交通省が各鉄道事業者に安全施設の整備を指導したため、乗降客の多い全国の2000に近い駅で万一の場合に列車を急停車させるための非常停止ボタンが設置された。山手線を運行させているJR東日本は17億円を投じて、転落した際にホームに上がるための足がかりとなるホームステップを136駅に、人が転落したら駅に入る電車を自動的に停車させる転落検知マットを新大久保駅など4駅に新設した。高架駅などのホーム下には退避スペースも作ったという。

 一昨年の『庫裡から悶々』で「事故後、新大久保駅ホーム下には避難スペースがつくられた。JRが2人の死に応えたささやかな餞別だった」と記したが、義挙の遺産は今やささやかどころではない。多くの人々に育まれ、大きな成果を挙げている。

 因縁めいた話もある。事故の現場となった新大久保駅ではその後、2件の転落事故があり、いずれも転落した人は九死に一生を得ている。まず、2人の事故の7カ月後の2001年8月20日の朝、専門学校に通う18歳の女性が誤ってホームから落ちたが、設置されて間もない転落検知マットが作動し、電車は50メートルほど手前で停車して事なきを得た。2006年5月21日の早朝には、酒に酔った18歳の女子大生がホームから転落。たまたまトイレに行こうと電車から途中下車したばかりの27歳の男性、よりによって韓国人留学生が、線路上に飛び降りて女性をホームに担ぎ上げた。2人が非業の死を遂げた場所から5メートルと離れていない地点。留学生は「李さんの魂が後押しし、守ってくれた」と話したという。

 2人の女性が助かったのは、関根さんと李さんの犠牲があったればこそ、と言っていい。だが、これで亡くなった2人も報われる……などと考えたら間違いだ。事故後に講じられた安全施策の数々が、事故前に実行されていたならば、2人は落命せずに済んだはずなのだ。命を守るためにできる対策があったのに、鉄道各社は手間ひまとコストを惜しんできた。その怠慢を見落としてはならない。

 義挙だからと情緒的にとらえず、2人が命と引き換えにして社会に問いかけたものを真摯に汲み取ることが大切だ。城源寺では毎年、2人の命日に合わせて追善法要を営み、筑前琵琶奏者の田原順子さんを招いて鎮魂の琵琶演奏会も催してきたが、狙いは2人が犠牲になったことの意味を問い、教訓を未来へ生かそうと考え続けることにある。

 残念ながら、事故の風化は進む。たまたま2人が日韓の青年だったので、事故が両国民のわだかまりの解消にも寄与してほしい、と念じてきたが、最近の韓国では李さんの勇気ばかりを強調する報道が目立つという。

 安易に讃美するのではなく、ましてや犠牲を慫慂することもなく、一宗教人として、事実を事実のまま語り継ぎ、言い継いでいきたい。人々が命の大切さを問い直すよすがとなることを祈りつつ。


2009年の「無我の正義」の法要と琵琶演奏会は、1月25日(日)午後1時から。詳しくはお知らせ(ニュース)をご覧ください。








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