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−庫裡から悶々−トップへ                                         (2009/01/02)
    第34回    良い夢見ようよ
 
庫裡から悶々
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第35回 語り継ぐ義挙

第34回 良い夢見ようよ

第33回 舌禍読禍宰相禍

第32回 冒頭の終わり


第31回 振り込め詐欺の真犯人

第30回 「老人力」のすすめ

第29回 僧徒たるを悔ゆる日

第28回 偶感「昭和二十年八月十五日」

第27回 仰げば恥ずかし わが師の陰

第26回 横綱の品格

第25回 『黄門さま』いずこ

第24回 戒めの16文字

第23回 百年目の「汚物教師」

第22回 怠慢の「12分」

第21回 物言いの一番

第20回 沖縄戦集団自決の真相究明に妥協は許されない

第19回 落ち葉して木々凛々と

第18回 『広辞苑』と私

第17回 子なき家

第16回 “軽老精神”

第15回 5W1Hプラスα

第14回 教育勅語から酌むべきもの

第13回 失われたニッポン人のDNAは再生出来るか

第12回 助けられたり助けたり

第11回 怯懦な共犯者

第10回 「最良のもの」探す日々

第9回 内角の和の中にをり石鼎忌

第8回 世直し先生は街角にいる

第7回 ある天文学者の遺言

第6回 壊れる家々の悲鳴

第5回 嗚呼!硫黄島−兵士たちの慟哭が聞こえる


第4回 よく聴けよ!柳沢大臣

第3回 無機質な社会の中で


第2回 義挙へのもどかしさ

第1回 ついの棲み家は姥捨山

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 カモン!ルーシー
とかくこの世はははんほほう話


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肇道和尚の「如是我聞」

 縁起の良い初夢は、「一富士二鷹三茄子」だという。
 江戸時代の随筆集『甲子(きのえね)夜話』に、謎解きのくだりがある。
 「徳川家康公駿城に御座在りしとき、初茄子の値高くして数銭を以て買い得る故、その値の高きを言わんとして、まず高きは富士なり、次は愛鷹山なり、その次は初茄子なりと言いしことなり」
 初茄子は家康の好物だったというが、「高き」が故に貴い、という意味で異種を並べたのだろうか。別の解釈では、富士は容姿が末広がり、鷹は天高く舞い上がり、茄子は頭を丸めている座頭の異名から毛が(怪我)がない、とそれぞれに縁起が良いからだという。もちろん茄子は「成す」にも通じる。

 所詮夢は幻覚にすぎないと、割り切ってしまえばそれまでだが、人生に託した希望や願望、さらには夢から醒めた時の失望……などなど、夢の演ずる不可思議さの中に、ひょっとすると、自分の本当の姿が隠れているのではなかろうか。

 水戸藩主・徳川斉昭に仕えて藩政改革を進め、藩財政を建て直したことでも知られる幕末の儒学者、藤田東湖は、興味深い漢詩を残している。『八月十八日夜夢に諳厄利亜(アンギリ=英国)を攻む』と題して、自らの夢枕を詠んだものだ。

 絶海の連檣 十万の兵
 雄心落落として 胡城(ロンドン)を圧す
 三更夢醒むれば 幽窓の下
 唯だ秋声の雨声に似たる有るのみ

 帆船を連ねて荒海を渡り、十万の兵を率いて、イギリスの都ロンドンに攻め入って敵軍を圧倒した。しかし、夜更けに目覚めると、ほの暗い窓辺に冷たい秋風が雨音のようにうなり声を上げて吹き付けており、夢だと気付いた――。
 夢には、文章の構成と同様、起承転結があるようだ。トントンと弾んだところに、どんでん返しが待ち受ける。《転》である。うまい話のはずが突然、恐怖に襲われて飛び起きることも珍しくない。東湖も夢から覚め、味気なさに気落ちしたことだろうが、ペリーの来航に刺激されてか、まだ見たこともない外国に侵攻する夢まで描く気宇壮大さには恐れ入る。

 順風に乗ればもちろん、逆境にあえぐ時も人は夢に期待を寄せる。苦しければ苦しいほどに夢を膨らませもする。かつての日本人の生きざまがそうだった。戦争によって夢破れても、再び夢を抱いて戦後のどん底生活から這い上がってきた。だからこそ、夢かなった喜びや達成感はもちろん、夢破れた空しさや哀しみにも通じ、夢見る人に優しかった。

 最近の日本人は夢を見失っているとしか思えない。理由の見当はつく。偏差値教育に飽き足らず、市町村ごとの学力テスト競争まで煽られては子供たちの瞳が輝かなくなって当たり前だ。非正規労働で差別され、「派遣切り」の悲哀を味あわされた若者は、うつむき加減に歩いても無理はない。虎の子の年金までが危うくなり、お年寄りも安閑としていられなくなった……。
 一番の責任は、政治家の失政にある。営利一辺倒の企業にも問題がある。が、市井に生きる人々も、夢を育む努力を忘れていなかったか。親子、親類、地域、そして、ご先祖との縁を軽んじる社会では、夢が育とうはずがない。夢とは情緒。潜在する意識なのだから。
 人と人のつながり=情を復権させ、潤いのある社会を取り戻そう。そして、みんなでいい夢を見ようよ。それこそが私の今年の夢である。









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