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−庫裡から悶々−トップへ (2007/09/05)
     第17回    子なき家
庫裡から悶々
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第35回 語り継ぐ義挙

第34回 良い夢見ようよ

第33回 舌禍読禍宰相禍

第32回 冒頭の終わり

第31回 振り込め詐欺の真犯人

第30回 「老人力」のすすめ

第29回 僧徒たるを悔ゆる日

第28回 偶感「昭和二十年八月十五日」

第27回 仰げば恥ずかし わが師の陰

第26回 横綱の品格

第25回 『黄門さま』いずこ

第24回 戒めの16文字

第23回 百年目の「汚物教師」

第22回 怠慢の「12分」

第21回 物言いの一番

第20回 沖縄戦集団自決の真相究明に妥協は許されない

第19回 落ち葉して木々凛々と

第18回 『広辞苑』と私

第17回 子なき家

第16回 “軽老精神”

第15回 5W1Hプラスα

第14回 教育勅語から酌むべきもの

第13回 失われたニッポン人のDNAは再生出来るか

第12回 助けられたり助けたり

第11回 怯懦な共犯者

第10回 「最良のもの」探す日々

第9回 内角の和の中にをり石鼎忌

第8回 世直し先生は街角にいる

第7回 ある天文学者の遺言

第6回 壊れる家々の悲鳴

第5回 嗚呼!硫黄島−兵士たちの慟哭が聞こえる


第4回 よく聴けよ!柳沢大臣

第3回 無機質な社会の中で


第2回 義挙へのもどかしさ

第1回 ついの棲み家は姥捨山

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 カモン!ルーシー
とかくこの世はははんほほう話


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 檀林風発 


肇道和尚の「如是我聞」

 終戦後、戦災で肉親を失って焼け跡を彷徨う浮浪児をはじめ「家なき子」が、町にあふれていた。フランスのエクトール・アンリ・マロの名作「家なき子」が映画化もされて、人々の涙を誘ったりもした。昨今は逆だ。「子なき家」の増加が切実な社会問題になっている。

 子がなければ、家が途絶える。先祖伝来の墓を守る者もいなくなる。後継ぎがなく、問題と直面したお年寄りの不安感には、想像を絶するものがあるようだ。覚悟をしていたつもりでも、歳を重ねればやりきれなさが募ってくる。
 K子さんも、その一人だ。傍目には穏やかに老後を楽しんでいるように映るが、実際は違う。総領娘だったので婿を迎えたが、夫とはとっくに死別した。子宝には恵まれなかった。墓に参るたび、底知れぬ寂寞感で胸が押し潰されそうになる。私が死んでしまったら、誰が供養してくれるのか。亡夫やご先祖様ともども無縁仏となってしまう……。考え出すと、夜も眠れないという。

 意外に知られていないが、加速する少子高齢化の波をもろに被っているのは、全国のお寺である。墓地に行けば、理由が直ぐに分かる。立ち並ぶ墓石に刻まれているのは「何々家先祖代々」の文字。新しい墓でさえ「何々家」が目につく。戦後、家制度は崩壊したのに、お寺を取り巻くのは、相変わらず「何々家」の墓であり、何々家先祖代々追善供養なのである。そもそもお寺を支えるのが、檀家と呼ぶ「何々家」の継承者たちでもある。

 少子化で檀家に「子なき家」が増えれば、お寺は立ち行かない。だから、お坊さんたちは社会の変化を肌で感じ、新しい寺檀関係を構築しなければならないと腐心している。だが、長年掲げてきた「先祖代々追善供養」というお寺の表看板を簡単に掛けかえることもできない。教化活動費の大半を檀家の法要による収入に依存しているのが、お寺の台所事情だからである。

 戦前の家制度が、個人の尊厳と両性の平等にもとるとしてGHQ(連合国軍総司令部)によって否定され、新しい民法が施行されてから既に半世紀以上が経つ。遺産の公平分配や男女不平等の撤廃など時代の要請に沿った改革が実現され、開かれた社会が到来したのは結構なことだと言えよう。家同士の縁結びだった結婚が、太郎さんと花子さんの男女の祝儀に様変わりしたことも、時代のすう勢だろう。万事に家長の権限がものを言った旧制度に欠陥があったことは事実である。

 しかし、家長を中心の家制度だけでなく、家族という共同意識体の絆が希薄となり、親子兄弟の情愛までが踏みにじられてしまったかに映るのは、嘆かわしい限りだ。家や家族の温もりが、古き良き時代を紡いできた歴史を忘れてはならない。


 内閣府の高齢社会白書をめくって驚いたのだが、信じられぬことに日本の親子は諸外国よりも冷めた関係になっているらしい。たとえば、別居している親と子の接触頻度(実際に会うことのほか電話なども含む)で比べると、「ほとんど毎日」は日本では約17%、米独仏韓国はすべて23%以上だ。とくに核家族化の本家というべき米国は、約41%と高い。「週1回以上」では、日本は約47%と半数に満たないのに、他国は軒並み約60%以上に達し、中でも米国は約81%と図抜けている。

 つまり、日本のお年寄りは別居している子供からろくに気に掛けてもらえず、諸外国のお年寄り以上に寂しく暮らしているわけだ。高度経済成長と人口の都市集中が核家族化を進め、「子なき家」を増やした。別居は仕方がないとしても、親子が疎遠になるのはおかしい。しかも、家制度を崩壊させた張本人の米国では親子の親密さがしっかり保たれているのに、家制度だけでなく敬愛、思慕の情でも結ばれていたはずの日本の親子の関係が冷めてしまったとは不思議でならない。
 GHQに日本の古い倫理観や道徳まで破壊しようとの意思があったことは間違いないが、そのせいだけではあるまい。日本人は終戦後、家制度の負の面ばかり見つめ、GHQの干渉を渡りに船とばかり、行き過ぎた改革をしてしまったのではないか。そのうち跡取りがいても「子なき家」が増えていく。

 お寺には毎日のように不安を抱いたお年寄りが訪れる。自分の世話や介護をめぐって子供たちが言い争っている、といった悩みを打ち明けられることも多い。親の葬儀の後、介護をした自分の相続分が何もしなかった皆と同じでは間尺に合わない……といった醜い兄弟げんかもしばしば目にする。
 先の大戦で失ったものは、計り知れないほど大きい。しみじみ、そう思う。









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