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−庫裡から悶々−トップへ (2007/08/03)
    第15回  5W1Hプラスα
庫裡から悶々
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第35回 語り継ぐ義挙

第34回 良い夢見ようよ

第33回 舌禍読禍宰相禍

第32回 冒頭の終わり

第31回 振り込め詐欺の真犯人

第30回 「老人力」のすすめ

第29回 僧徒たるを悔ゆる日

第28回 偶感「昭和二十年八月十五日」

第27回 仰げば恥ずかし わが師の陰

第26回 横綱の品格

第25回 『黄門さま』いずこ

第24回 戒めの16文字

第23回 百年目の「汚物教師」

第22回 怠慢の「12分」

第21回 物言いの一番

第20回 沖縄戦集団自決の真相究明に妥協は許されない

第19回 落ち葉して木々凛々と

第18回 『広辞苑』と私

第17回 子なき家

第16回 “軽老精神”

第15回 5W1Hプラスα

第14回 教育勅語から酌むべきもの

第13回 失われたニッポン人のDNAは再生出来るか

第12回 助けられたり助けたり

第11回 怯懦な共犯者

第10回 「最良のもの」探す日々

第9回 内角の和の中にをり石鼎忌

第8回 世直し先生は街角にいる

第7回 ある天文学者の遺言

第6回 壊れる家々の悲鳴

第5回 嗚呼!硫黄島−兵士たちの慟哭が聞こえる


第4回 よく聴けよ!柳沢大臣

第3回 無機質な社会の中で


第2回 義挙へのもどかしさ

第1回 ついの棲み家は姥捨山

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 カモン!ルーシー
とかくこの世はははんほほう話


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 檀林風発 


肇道和尚の「如是我聞」

 東京・六本木の国立新美術館で開催中の「毎日書道展」を見に行くため、久々に小田急電車に乗り、駆け出し記者時代の事件を思い出した。苦い思い出であると同時に、新聞記者の原点を教えられた貴重な体験でもある。

 事件は、小田急線向ヶ丘遊園駅の名前の由来となった遊園地の中で起きた。3年前に閉園されたが、素敵なバラ苑だけが昔の名残りを今に留めている。

 新聞社に入って半年ほど経った頃だった。地方版の締め切り時間を控え、受け持ちの警察署を最後に一回りしていて小学生の水死事故が起きていたことをつかんだ。わざわざ原稿用紙に書くほどのことはない、覚えたての“メモ読み”で済ませた。取材した要点を書いたメモ帳を片手に、頭の中で原稿にまとめて電話で本社の「連絡さん」という、原稿の受け取り役に読み上げる手法である。
 『向ヶ丘遊園に遊びに来た東京の学童が、園内の古井戸に落ちて水死した』。短い原稿だが、いつ、どこで、だれが、どうして、どうなった――という例の「5W1H」はちゃんと盛り込んだ。ハイ、一丁上がーり。本日はこれでおしまい。ご苦労様。慌しいサツ回り記者の一日が終わった。

 やがて、夜が明けて朝が来た。まずは朝刊に目を通し、他紙も一読。特ダネを抜かれてはいないようだ。今日も一日頑張りましょうと、顔を洗い、髭をそっている時、電話が鳴った。そして、雷が落ちた。電話の向こうは本社デスクだった。「朝日を見たか」。怒声。そして、ガチャリ、叩きつけたように電話は切れた。

 改めて朝日の社会面を開くと、3段抜きで『遠足の学童 古井戸に落ち死亡 向ヶ丘遊園地』の文字が踊っているではないか。見出しはチェックしたつもりだったが、寝ぼけ眼だったせいか見落としていたらしい。私が前日、電話で送った原稿と同じ事故を報じていながら、私の原稿にはない重大な要素が記されていた。

 「遠足」

 そうだった。平日に、都内の学童が、隣県の遊園地に遊びに来て遭難していた。そのことは承知していたのに、なぜ、疑問を抱かなかったのか。サツ回り記者失格。ニュースの勘所を取材していなかった。
 子どもたちが飛び回る遊園地に、古井戸を放置した管理者の落ち度だ。集団引率者の責任も問われねばならない。手繰れば幾つもの問題が提起される。今なら社会面トップにもなる大ニュースだった。

 まだ、戦後間もないころで、紙面が十分になかったから、そこまで追求した新聞はなかったので救われた。が、言い訳のきかぬ失敗だった。事件原稿には「5W1H」に加えて、重要なエレメントの「プラスα」があることを思い知らされた。

 振り返れば、有難いデスクの雷ではあった。もし、あの朝、怒鳴られていなければ、私は朝日の記事に負けたことも知らず、そのまま一人前の記者になった気分でいたかもしれない。デスクの電話で目が覚めて、以来、取材のたびに「5W1H」のほかに「プラスα」はないか、と気をつけるようになった。曲がりなりに30年、新聞記者を務めることができたのも、向ヶ丘遊園の事故のおかげかもしれない。
 そんなことを考えながら、六本木に着いた。新装なった美術館で、清々しく書を鑑賞できたことを感謝せずにはいられなかった。







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