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−庫裡から悶々−トップへ (2007/02/16)
第4回 よく聴けよ! 柳沢大臣      
庫裡から悶々
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第35回 語り継ぐ義挙

第34回 良い夢見ようよ

第33回 舌禍読禍宰相禍

第32回 冒頭の終わり

第31回 振り込め詐欺の真犯人

第30回 「老人力」のすすめ

第29回 僧徒たるを悔ゆる日

第28回 偶感「昭和二十年八月十五日」

第27回 仰げば恥ずかし わが師の陰

第26回 横綱の品格

第25回 『黄門さま』いずこ

第24回 戒めの16文字

第23回 百年目の「汚物教師」

第22回 怠慢の「12分」

第21回 物言いの一番

第20回 沖縄戦集団自決の真相究明に妥協は許されない

第19回 落ち葉して木々凛々と

第18回 『広辞苑』と私

第17回 子なき家

第16回 “軽老精神”

第15回 5W1Hプラスα

第14回 教育勅語から酌むべきもの

第13回 失われたニッポン人のDNAは再生出来るか

第12回 助けられたり助けたり

第11回 怯懦な共犯者

第10回 「最良のもの」探す日々

第9回 内角の和の中にをり石鼎忌

第8回 世直し先生は街角にいる

第7回 ある天文学者の遺言

第6回 壊れる家々の悲鳴

第5回 嗚呼!硫黄島−兵士たちの慟哭が聞こえる

第4回 よく聴けよ!柳沢大臣


第3回 無機質な社会の中で


第2回 義挙へのもどかしさ

第1回 ついの棲み家は姥捨山

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とかくこの世は
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 檀林風発


肇道和尚の「如是我聞」

 女にて生まざることも罪の如く秘(ひそ)かにものの種乾く季(とき)
                                     富小路禎子

 新聞社の後輩でもある歌人、松村由利子さんの近著『物語のはじまり−短歌でつづる日常』(中央公論新社刊)に紹介されている一首だ。

 子を産まなかった女性が「罪の如く」と表現しなければならないほど心を痛めているとは思わなかった。発芽せぬまま干からびていく種子を、女性としての能力を活かせぬまま老いていく自分と重ね合わせたのだろうか。

 歌の作者は、旧華族の出身。戦後没落して職を失った父親を支えながら結婚も出産もせずに34年間の会社勤めをまっとうした人という。立派な人生を歩んでいるのに、子を持たぬことに後ろめたさを感じてしまうのは「女は子を産んで一人前」という古い観念が社会から払拭されていないからだろうか。

 同書には、次のような激しい短歌も載っている。

 かすがいとなるのみならば金輪際この身のうちに宿るなあかご
                                     河本恵津子
 植えざれば耕さざれば産まざれば見つくすのみの命もつなり
                                     馬場あき子

 河本さんは不妊に悩んだ経験者。「子はかすがい」「子供を産んで一人前」といった世間のさりげない言葉が、どれほど不妊の女性を傷つけているかを詠み込んでいる。夫婦の仲を取り持ってもらおうなどという不遜な気持ちで赤ちゃんが欲しいのではないぞ、と叫びたかったのだろうか。
 馬場さんは「ざれば」を三つ重ねて、仕事を選んだために子どもを産まずに終わる女性の心境を詠んだのだろう。子どもを産まない代わりに出産に匹敵するような大事を成し遂げてやるぞ、と宣言しているのかもしれない。

 一児の母でもある著者の松村さんは「産みたくても産めなかった人や決意して産まなかった人は、痛みを抱えつつ世界と向かい合っている。見つくす覚悟もなく、のほほんと子育てしてはいけないと自らを省みる」と記している。
 これらの歌を読むうちに「女性は産む機械」と言った柳沢伯夫厚生労働相の失言の罪深さが、際立ってきた。男性が想像する以上に、女性がショックを受けていることは間違いない。

 失言は、妊娠、出産という厳粛な生の営みを戯画化して女性をロボット扱いしただけではない。子を産まぬことに罪悪感さえ抱かずにはいられない女性たちを心なくも傷つけたのである。子宝に恵まれた女性たちにも、お世継ぎを産めと強いられている皇太子妃にも似た苦痛を味わった経験があるから、女性たちは、この種の失言には過敏に反応するのだろう。

 少子化に歯止めをかけるには、安心して子を産める立場に女性を誘うしかない。結婚の形にこだわらず、未婚のカップルや未婚の母を社会で認知したり、子育てを物心両面で支援し、働く女性が出産しやすい環境を整えることが必要だ。ラブ・チャイルド(嫡外子)への法的な差別も撤廃しなくてはならない。
 
 それなのに、機械が限られているのだから頭数で頑張れというのでは、女性の神経を逆撫でするだけだ。「産めよ殖やせよ」の軍国主義思想への回帰でもある。女性たちは失言の奥底に「嫁して三年、子なきは去れ」の冷酷さを感じ取ればこそ、反発するのだ。

 柳沢厚労相は改めて謝罪した会見でも「結婚して二人以上の子どもを持ちたいというのが健全な希望」だと発言した。これでは一人っ子や子宝に恵まれない夫婦は不健全ということになる。救いようのない失言魔である。

 そんな柳沢発言を庇い続ける安倍首相や与党に『無機質化した政治』の陰がつきまとう。庶民の生活の匂いを嗅ぎ取ろうとしない政治の傲慢さに猛烈な怒りを感ずる。






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