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−庫裡から悶々−トップへ (2007/01/22)
第2回 義挙へのもどかしさ  
庫裡から悶々
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第35回 語り継ぐ義挙

第34回 良い夢見ようよ

第33回 舌禍読禍宰相禍

第32回 冒頭の終わり

第31回 振り込め詐欺の真犯人

第30回 「老人力」のすすめ

第29回 僧徒たるを悔ゆる日

第28回 偶感「昭和二十年八月十五日」

第27回 仰げば恥ずかし わが師の陰

第26回 横綱の品格

第25回 『黄門さま』いずこ

第24回 戒めの16文字

第23回 百年目の「汚物教師」

第22回 怠慢の「12分」

第21回 物言いの一番

第20回 沖縄戦集団自決の真相究明に妥協は許されない

第19回 落ち葉して木々凛々と

第18回 『広辞苑』と私

第17回 子なき家

第16回 “軽老精神”

第15回 5W1Hプラスα

第14回 教育勅語から酌むべきもの

第13回 失われたニッポン人のDNAは再生出来るか

第12回 助けられたり助けたり

第11回 怯懦な共犯者

第10回 「最良のもの」探す日々

第9回 内角の和の中にをり石鼎忌

第8回 世直し先生は街角にいる

第7回 ある天文学者の遺言

第6回 壊れる家々の悲鳴

第5回 嗚呼!硫黄島−兵士たちの慟哭が聞こえる

第4回 よく聴けよ!柳沢大臣

第3回 無機質な社会の中で


第2回 義挙へのもどかしさ

第1回 ついの棲み家は姥捨山

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 カモン!ルーシー
とかくこの世は
ははんほほう話

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 檀林風発


肇道和尚の「如是我聞」

 JR山手線・新大久保駅でカメラマン・関根史郎さんと韓国人留学生・李秀賢さんの2人が、ホームから転落した男性を助けようとして、巻き添え死したのは、6年前の1月26日夜だった。その翌日、M新聞社の論説委員室では、この事件が投げかけた“生と死”の社説扱いを巡って侃々諤々(かんかんがくがく)の論議が交わされた。

 見知らぬ人が線路に落ちた。列車は2分間隔で走ってくる。救出は一刻を争う。転落者を見た瞬間、2人の神経は“救助”の一念に凝り固まり、自らの生命の危険を顧みることを忘れていた。とっさに飛び降りたのだ。

 犠牲という言葉がある。自己を忘れて他のために尽くす、と辞書にはある。関根さんは親一人、子一人、その母はすでに老いている。李さんは故郷に恋人がいた。そのしがらみを顧みる余裕はなかった。まさに、これは犠牲と言うにふさわしい壮烈な死である。が、悲惨な事件でもあった。李さんの場合は結果としては日韓親善の懸け橋となったとはいえ、二度とあってはならない犠牲である。

 いま、我々が口にする犠牲とは、他人から不利な条件を押し付けられることをいう。この言葉が持つ本来のニューアンスからは遠く掛け離れている。

 本当の犠牲という言葉の重みを身をもって人々に知らしめた関根さんと李さんなのだ。それはいかなる財物をもってしても償えるものではない。どんな賛辞も、その壮烈さの前には空虚な響きしかもたない。

 「線路に散った正義」と表現した新聞もあったが、讃えつつも「真似よ」といえないもどかしさをマスコミの誰もが痛感したことだろう。M新聞社論説室の結論も、一片の論評で片付けられるものではない、として社説扱いを見送ったと聞く。

 かつて、日本人は犠牲死を美学と捉えた時代があった。それは武士道、大和魂の依り処であった。が、反面、個人の人権を甚だしく冒涜するものでもあった。軍国主義が生々しくそれを実証している。
 だからこそ、21世紀劈頭のこの「義挙」を知ったとき、私は複雑な心境で「お前にこの真似が出来るか」と自問自答した。関根さん、李さんには申し訳ないが、手放しで讃えることに躊躇した。

 高橋佳子さんの詩『存在のふるさと』にこんな一節がある。

   今日一日を誰のために生きただろう
   この出会い一体どこに委ねただろう
   人命は神意
   縁のめぐりあい
   もしあのときこの人にであわなかったら
   いまの私はない
  
 (中略)
   人々の連帯とさまざまな出会いを
   輪廻の不思議が
   この私を生かしてゆく


 2人の死が「神意」によるものなのかどうかは私には分からない。だが、他人の生命に自らの生命を賭けた2人の“聖なる行為”が全く同時進行的であった偶然に「輪廻の不思議」を感ずる。やはり神意というべきだろうか。

 事故後、新大久保駅ホーム下には避難スペースがつくられた。JRが2人の死に応えたささやかな餞別だった。

 城源寺では事件の後、2人の命日に法要を営んでいる。七回忌の今年も1月26日(金)午後1時半から、法要を行い、琵琶演奏家・田原順子による追悼の筑前琵琶演奏会を開催する。


2009年の「無我の正義を称える集い」は、1月25日日曜日午後1時開場。詳しくはお知らせ(ニュース)をご覧ください。








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