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ははんほほう話                                (2009/05/17)
第12回 自殺と共生    
――清水由貴子さんの死に思う
ははんほほう話
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第15回 大きな忘れ物

第14回 “キになる”言葉

第13回 汝、西方を思念せよ

第12回 自殺と共生――清水由貴子さんの死に思う

第11回 僧侶の一分

第10回 妙子地蔵縁起

第9回 「共生」考

第8回 私のお墓の前で泣いてください

第7回 「足のない教団」といわれて

第6回 おふくろさんよ

第5回 ウルトラマンの慈悲

第4回 ほのぼの交番

第3回 「定形外」を目指す


第2回 再論・悪魔ちゃん騒動

第1回 本能と煩悩

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 カモン!ルーシー
庫裡から悶々
とかくこの世は




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 檀林風発
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肇道和尚の「如是我聞」
 
 “富士山麓の花の墓園”と評判の『富士霊園』は、春は桜、今ごろはツツジの花盛りである。その花々に見守られるように、清水由貴子さんが父親の墓前で自らの命を絶った。榊原郁恵、高田みずえと共に70年代後半に「フレッシュ3人娘」の名をほしいままにした元タレントである。小雨降る4月21日朝のことだった。

 テレビのバラエティ『欽ちゃんの週刊金曜日』やドラマ『幸福の明日』、ヤクルトのCMなどでおなじみの笑顔は3年前の芸能界からの引退で消えたものの、多くの人々の胸に深く刻まれていたはずだ。痴呆症の母親の看護に専念しながらも、持ち前の明るさは変わらなかったという。
 その日も、「夕方には帰るから」と同居する妹に言い置いて、車椅子の母親と出掛けた。まさか死出の旅だったとは思えなかったが、硫化水素発生装置の洗剤や洗面器を用意していたこと、手短かながら妹宛の遺書があったことから覚悟の上の行動だったことには間違いない。だが、その遺体の傍らで母がうなだれていたのは、道連れにすることを土壇場で思い留まったせいだろう。華やかな過去を捨て、ただ一筋に病み老いたる母の介護に尽くして散った49歳の女の一生。あまりに美しく、あまりにも哀れではないか。一体、彼女に死を決意させたものは何か。

 3万2249人。昨年(2008年)の自殺者数である(警察庁発表)。年間自殺者はもう11年間も連続で3万人を超えている。人口3万人の町、神奈川県でいえば二宮、大磯、葉山といった町が毎年一つずつ消えていく計算だから、穏やかではいられない。
 
 自殺は昔から鬱病や人格障害、アルコール依存症などの精神疾患との関連を指摘されてきた。しかし、引き金となるのは、不況、離職、貧困といった問題だ。最近は介護、独居、老齢などで自分の力だけでは生きて行けない人々が、生きる希望を失って死を選んでいる。とすれば、責任を負うべきは、社会そのものではないか。言い換えれば、清水さんらを死に追いやったのは、社会という名の“生きる者の集団”だ。あなたも私も構成員の一人であり、ひいては自殺の幇助者だとも言えよう。

 「共生」という言葉がある。人と人の共生、人と動物との共生、人と植物との共生、人と自然との共生……。その共生の度合いが崩れたととき、悲劇が起こる。山林開発によって、棲みかを失った猿が人里を襲い出したのも、その一例である。共生は自然社会の不文律であり、勝手に破った人間の我がままは責められなければならない。

 共生は新しい考え方のように受け取る向きもあるが、浄土宗の僧侶で増上寺法主を務めた椎尾弁匡師は大正末期、人々に先がけてこのルールを護ろうじゃないか、と提唱している。浄土宗では今、21世紀最大のテーマと「共生社会」の創出を呼びかけているが、伝統的な取り組みといっていい。ならば、自殺問題にも向き合わないと間尺に合わない。

 「自殺と共生」は一見、二律背反するようだが、解決する鍵は、仏教に説く慈悲にある。慈悲は仏の心。他人に楽を与えることを「慈」、苦を抜いてあげることを「悲」という。つまり「抜苦与楽」があれば、自殺願望者は社会と共生できる。そう私は思う。

 人生は苦の連続で、人々は呻きながら生きている。そうした他人の呻きを、我が痛みに置き換えて思いやる慈悲の心があれば、「自殺と共生」は二律背反する課題ではない。目の前の自殺願望者に知らぬふりなどできようはずはない。
 だが、現実はどうだろう。自殺者の呻きを耳にしながら、共生社会の必然を説く愚を犯してはいないだろうか。あるいは「政治の貧困」と安易に片付けてはいないだろうか。孝行娘、清水さんの訃報に接し、我と我が身を恥かしく感じている。






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